
8月の安倍前総理辞任以降、風当たりの強い通信業界。
「今後携帯電話料金の値下げがくると、株価が下がるのでは?」
との警戒感は依然として残っております。
しかし、先日発表されたKDDIの第2四半期決算(上期決算)は、至って好調。
コロナに対しては、今後もほとんど影響がないとみて問題ないでしょう。
それでは、以下決算内容を確認していきます。
目次
KDDIの2021年3月期第2四半期決算は減収増益
①売上・利益
前回の第1四半期に続き、減収増益です。
売上こそ前年比-1.1%と下げたものの、最終益は+7.3%と第1四半期同様まずまずの黒字となっております。
通期予想は6,400億円の黒字を予想しておりますが、現在すでに3,700億円まで達していることを考えると、7,000億円以上も十分射程圏内です。
携帯業界関係者に話を伺ったところ、iPhoneの発売と年度末が売上が上がるようなので、下期も期待できます。
②財務
財務の健全性を測る項目は、フリーキャッシュフローと自己資本比率です。
具体的な条件は、
- フリーキャッシュフローがプラスであること
- 自己資本比率が40%以上であること
になります。
今回の決算を受けて、
- フリーキャッシュフローはプラス
- 自己資本比率は46.8%
と、双方クリアしております。
③1株配当・配当性向
今期は5円増配の120円/株の配当見込みです。
これでほぼ19期連続の増配が決まりました。
配当性向も43%と、無理のない配当金額と判断できます。
配当利回りも11/2時点で4.11%と高水準です。
業績面および財務面、そして無理のない配当という観点から、KDDIは買って問題なしと判断できます。
KDDIの問題は政府の値下げ圧力のみ

上述のとおり、現時点でのKDDIの経営には全くと言っていい程問題がありません。
しかし、ご存じのとおり通信業界は現在政府からの値下げ圧力がかかっております。
この問題が決着しない限りは、しばらく株価は不安定で買いにいくのに抵抗がある状況が続きます。
以下携帯業界にいる知り合いから聞いた内容に基づいて、個人的見解を述べます。
尚、私は今回の政府の圧力は、以下の理由からKDDIの経営の安定性を揺るがすものではないと判断しております。
①値下げは強制できない。まずは格安スマホへの移行を促すだけ
おそらく通常の携帯料金はなかなか下がらないのでは、と考えております。
まず、これから5Gの時代に突入し、これまでよりクオリティの高い商品・サービスを提供するため、普通に考えて経費は高くなるでしょう。
そうなると、携帯料金は値下げするどころか値上げしないと、通信事業は破綻してしまいます。
そのため、政府の言う値下げを実現するためには、値下げを希望する人を格安スマホへ移行していただく方法を取るしかありません。
事実、ソフトバンクと同じタイミングで発表された20Gの大容量プランは、サブブランドであるUQモバイルのプランでした。
ソフトバンクも同様にサブブランドのYモバイルでした。
結局、圧力をかけることができても、値下げの強制はできません。
格安スマホの魅力を上げて移行を促し、格安への流出が激しくなってメインの方も値下げせざるを得ないようにするしかないのです。
②携帯料金ってそもそも高いの?20G/月も使うのは娯楽・浪費です
そもそも、今の携帯電話は生活必需品の部分と娯楽・浪費にあたる部分が混在しております。
通話・メール・LINEなどのちょっとしたアプリを使うだけで月額1万円も2万円もかかるのなら、確かに高すぎで問題ありです。
しかし、WiFiのない環境で動画をダウンロードしまくったり、ゲームで課金しまくったりして月10万円の請求がきたというのは、ただの浪費で文句は言えません。
現在のスマートフォンは電話とメールの通常機能の他、ゲーム・デジカメ・音楽・動画視聴などができます。
こんなに機能が詰め込まれているのだから、機能をフル活用したら、決して端末代も使用料も高くはないと思います。
ちなみに、私はiPhone11持ちでドコモのギガライトで契約しております。
月額は5,000円台で毎月済んでおります。
動画は外では全く見ず、電車の移動中にゲームをやっていることが多いです。(私唯一の時間的浪費行動です。課金は一切しておりません)
使用量はおおむね3G/月で収まるため、携帯料金は上記で済んでおります。
通常の電話とメール(LINE)にゲームや検索で記事を読んで月5,000円台なら、私は十分満足です。
格安スマホにして月額を安くなっても、携帯の処理能力がなくゲームがサクサク進まなくなるのが、私にとっては一番問題です。
20Gも毎月使って高いと言っているのは、娯楽と混同しており、政府の言う値下げ対象からは外されるべきだと考えます。
③端末料金は変わらない
いくら政府が値下げしろと圧力をかけても、アメリカ企業であるアップルに圧力をかけることはできません。
そのため、iPhoneの新機種が安くなることはないのです。
もちろん日本企業だからといって、ソニーへXperiaの端末代を下げろと命令することもできません。
ということは、相変わらず分割で買う人は、月々の使用料に本体の代金を分割払いするため、結局毎月の携帯料金価格は高いままです。
④携帯料金値下げ記事のコメントをみても、国民はあまり期待していない
携帯料金値下げ記事はいくつもありますが、コメント欄をみると手放しに喜んでいる方は少なく感じました。
「公共の電波で莫大な利益を・・・というなら、まずNHKから改革を」といった意見が目立ちました。
また、生活必需品という観点でいうのなら、「自動車にかかる多くの税金を撤廃してくれ」という意見もございました。
携帯電話に関しては上述の私の意見とほぼ同様の方が多く、もともと格安スマホという受け皿があるのだから、個人の力で下げられるとの考えが多数です。
世論がそれ程追随していない現状を考えると、携帯料金値下げは民意とは言えないのではないでしょうか?
⑤現政権がいつまで持つか分からない
菅総理の就任当初は支持率も高く、様々な改革を断行していく意思と勢いを感じました。
しかし、先日の学術会議の野党からの追求への菅総理の返答がしどろもどろであったり、先述の携帯値下げも格安の方であったりと、やや勢いに陰りを見せております。
菅総理は無派閥であることから、もし政権運営がうまくいかず自民党の重鎮方の信頼を失えば、たちまち総理交代となる可能性があります。
その場合、次の政権が現在行っている政策を引き続き行うかは不透明です。
もし本当に携帯料金が下がり収益が悪化したら、沖縄かアメリカに飛びましょう

菅総理の意向が本当に実現されたら、おそらく収益は下がり株価も下がります。
そして、肝心の配当金も下がることとなるため、おそらくKDDIはじめ通信株は購入対象から外れます。
この可能性は極めて低いと考えますが、少しでも可能性がある以上考慮する必要があります。
もしこのような事態となった場合は、もちろん即刻売却です。
そして、その後の投資対象はアメリカの通信企業となるでしょう。
AT&Tやベライゾンといったアメリカの通信株も、日本の通信株同様に高配当銘柄です。
通信にこだわることもないかと思いますが、業種を分散するのなら日本を飛び出しアメリカへ投資するのも選択肢のひとつです。
また、KDDIの子会社である沖縄セルラーなら、大手3社ではないため影響が少なくて済むかもしれません。
事実、8月以降大手3社が株価を下げる中、沖縄セルラーはほぼ無風でした。
やや株価が高いのが難点ですが、こちらに乗り換えるのも有効な手段と言えます。
終わりに
第1四半期に続き好調キープのKDDI。
コロナの影響はほぼないことから、買いたい人は買って、保有中の人は継続保有で問題ありません。
しかし、依然として政府からの携帯料金値下げ圧力は続いており、これを無視して買いに行きづらい状況です。
携帯料金値下げから株価下落、配当減配という最悪の事態は頭の隅に置いておき、その時の対処方法を考えておきましょう。
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