よく耳にするのが、
「不動産会社に騒音のクレームをつけたけど、何もしてくれない」
「不動産会社に設備の修理依頼をしたけど、すぐに対応してくれない」
といった不動産会社に対する不満の声です。
私も、ほぼ毎日何かしらのクレームを受けますが、なぜこういった声が出てくるのでしょうか?
ここでは、その理由と解決方法を解説していきます。
本記事の信頼性
私は現役の不動産賃貸の営業マンです。
業界歴は約15年で、現在は元付業者勤務。
昨年から在宅時間が多くなったせいで、騒音クレームが多くなり絶賛ノイローゼぎみ(苦笑)
不動産会社がすぐにクレーム対応できない理由とは?
不動産会社がすぐにクレーム対応できない理由は主に以下のとおりです。
- トラブルを起こしているのは他の入居者であって、不動産会社自体が起こしているトラブルではない
- 不動産会社には設備に関する知識がない
- 権限があるのはオーナー。不動産会社には金銭のかかることに対し決定権がない
それでは、順番に解説していきます。
①トラブルを起こしているのは他の入居者であって、不動産会社自体が起こしているトラブルではない
まず、騒音クレームを想像して下さい。
うるさいのは上の住人なり、隣の住人です。
不動産会社の営業マンが騒ぎを起こしている張本人ではありません。
そのため、いくら不動産会社へクレームを入れても、その騒音にどれだけ困っているかという思いは、実際騒いでいる人に伝わりにくいのです。
不動産会社は、手紙なり直接電話するなりでクレームが入っていることを伝えることしかできません。
それ以降解決するかは、騒音を起こしている人の良心にかかっております。
では、注意してもらっても止まない場合、その住人を契約違反で退去させることができるでしょうか?
答えはノーです。
居住権は所有者ですらおいそれと侵害できないほど強力な権利なのです。
仮に裁判を起こしても、退去命令を出してくれることなど余程のことでもない限り、まずあり得ません。
結局、不動産会社には騒音を強制的に止めさせることも、その住人を追い出すこともできないのが現実なのです。
②不動産会社には設備に関する知識がない
次は、自宅のエアコンが故障してしまったことを想像して下さい。
夏の暑い日に故障してしまうと、非常に困りますね。
では、これを不動産会社へ伝えてすぐ直してくれるでしょうか?
こちらの答えもノーです。
なぜなら、不動産業者は設備に関する知識がないからです。
できるのは、直せる人(業者)を手配するなり、オーナーなど権限のある人に報告するなりすることまで。
不動産業者自身はエアコンを直すことができません。
おそらく、多くの不動産会社はここまでなら最低クレームのあった当日か翌日には行います。
しかし、その後は業者の都合によってしまいます。
修理したくても部品が手元になかったり、予定が詰まってすぐの訪問ができなかったりするとどうしても対応が遅れます。
そして、このような理由で対応が遅くなることは多々あるため、対応が遅いのは「不動産会社のせい」「不動産会社は何もしてくれない」と入居者に思われてしまうのです。
③権限があるのはオーナー。不動産会社には金銭のかかることに対し決定権がない
物件に付帯する設備はオーナーの所有物であるため、修理する場合は所有者であるオーナーの了承を取らなければなりません。
そのため、不動産会社はオーナーの了承を得ず、勝手に修理依頼をすることはできません。
勝手に修理してその代金をオーナーに請求などしたら、当然逆鱗に触れ、最悪以後募集依頼をしてもらえなくなる可能性まであります。
対応が遅いときにありがちなのが、
- オーナーと連絡が取れない
- 入居者に過失があるなど主張し、修理することや費用負担することに納得してもらえない
といった場合です。
これも不動産会社自体には全く落ち度がないのですが、入居者から見たら「不動産会社の対応が悪い」と映ってしまうのです。
不動産会社と管理会社の違いとは?
みなさんは「不動産会社」と「管理会社」の違いを正しく理解しているでしょうか?
私の体感では、半数以上が理解できていないと感じます。
まず、不動産会社の主な業務はオーナーと入居者の「仲介」です。
オーナーから空室の募集依頼を受け、部屋探しの客を案内し決まったら申込から契約までの手続きを行うことが主な業務となります。
一方、入居した後の設備不良やクレーム等の対応は、不動産会社ではなく管理会社が行います。
不動産会社が管理会社を兼任していることもありますが、少なくとも案内や契約をした担当者が管理業務まで行うことはあまりありません。
そのため、入居中に設備不良や騒音被害を受けた場合、連絡先は管理会社となります。
しかしながら現実は、入居中の設備の故障や騒音クレームなど、私の元(契約した不動産会社)にもガンガン電話やメールでやってきます。
契約時に入居後何かあったときの連絡先を伝えているにも関わらずです。
もちろん来てしまったものにはそれなりの対応をしますが、前述のとおり不動産会社に権限はないため、管理会社なりオーナーなりに報告入れて終了です。
このようにお伝えすると、
「不動産会社に言っても受付してくれるから問題ない」
と思われがちですが、これでは入居者側に大きなデメリットがあります。
それは、正式な修理依頼の受付は管理会社(またはオーナー)に報告が上がった時点となり、正しい連絡先へ依頼しないと対応まで時間がかかってしまうからです。
もし最初から管理会社へ連絡していれば、もっと早くに受付されすばやく対応できたでしょう。
この不動産会社と管理会社の違いを覚えていないと、特に年末年始のような不動産会社が長期休業に入ったときに痛い目をみます。
「年末にエアコンが壊れる」→「不動産会社に連絡したが、営業開始するのが年明け」→「年明けようやく電話がつながり業者手配」
となったら悲惨な年越しとなってしまいますね。
そうならないために大手の管理会社は、ほぼ24時間連絡が取れる体制を整えております。
ということで、この違いを理解していなかった人は、すぐに自分の住んでいる物件の正式な問い合わせ先を確認してみましょう。
トラブルが起こったときの対処方法例
それでは最後に、もしトラブルが起きてしまったらどういった対応が得策か解説していきます。
①騒音トラブルの対処法は警察を呼ぶのが効果的
前述のとおり不動産会社へクレームを入れたところで、9割方解決しません。
そもそも、騒音発生時に不動産会社の人間が現場にいることなどあり得ません。
結局後から注意しても、騒音が発生していないときになるため、効果が薄いのです。
そこで、騒音がひどい時は「警察に通報する」が実は正解。
現場を押さえて注意してもらえるし、警察という公権力がやってきたのですから、相手に「やばい」と思ってもらえる可能性が高くなります。
また、不動産会社と違い24時間対応(受付ではなく)なので、夜間でも土日祝日でも動いてくれるのがメリットです。
尚、隣の物件など他の物件からの騒音ですと管理会社にも入居者情報がなく連絡の取りようがない場合もあるため、こういったケースも警察をご利用いただくのが吉となります。
②それでも騒音トラブルが続くようなら逃げるが勝ち。引っ越しの検討を
自身の受忍限度を超える騒音が続いたら、それを止めさせるより引っ越した方が早いです。
例えば、「上階に小さな子供が入居していて、走り回って足音がうるさい」という状況だったとします。
これをストレートに言っても、その子の親は、
「すみません、気をつけます」
とは大抵答えてくれますが、残念ながら無邪気な子供には通じません。
すると、言っても直らないとまた憤ってクレームが入ります。
続けて上階に伝えると最初は協力的な回答だったのが、
「こっちだって気をつけている。下の階の住人も共同住宅なんだから少しは我慢しろ!!」
と返答が変わってきます。
この状態になると、もう解決方法はどちらかが退去するしかなくなります。
騒音トラブルは、結局物理的になくさないとほぼ解決しません。
何ヶ月も何年も上下階の入居者同士で不毛な戦いを続けるくらいなら、さっさと新しい物件に引っ越しした方が絶対に得です。
どうしても騒音が我慢できない人は、相手をどうにかするより自分が動く選択をしてみて下さい。
尚、ここで重要なのは、
「自分が悪いわけではないのに、なんで自分の方が出ていかなければいけないんだ!」
と意固地にならないこと。
意地になってもストレスが溜まり無駄な時間を送ることになるので、逃げるが勝ちと割り切ってしまいましょう。
③設備の故障・不具合が発生した際の対処方法
前述のとおり、設備に対する権限は契約した不動産会社にはありません。
必ず自分が住んでいる物件を管理している「管理会社」の連絡先を分かるようにしておきましょう。
正しい連絡先へ連絡することによって、対応してくれるまでの時間が短くなります。
また、故障・不具合を起こしている設備の情報を管理会社へ教えて下さい。
例えば、エアコンだったら本体の下や脇に記載されている「メーカー」や「品番」のことを指します。
これを管理会社へ伝えることで、業者の対応がスムーズになります。
「壊れたから早く直せ」では、最初に来た際は調査だけになり、再度訪問して直すとなり時間がかかってしまうので、入居者側も協力的な対応を取ってあげましょう。
まとめ
- 自分の入居している物件の正しい連絡先を把握する
- 設備不良時は、管理会社へ故障した物の情報を正しく伝える
- 騒音トラブルの解決は難しい。どうしても我慢できないなら引っ越しを考える
入居中のトラブルは誰にでも起こり得ること。
上記を知らずに契約した不動産会社へクレームをつけたり、他の入居者と不毛な争いをしていると、無駄な時間とストレスが溜まるだけです。
不動産管理に関する正しい知識を身につけ、トラブルが起こっても上手に立ち回ることができるようにしましょう。
>>>第7回へ(準備中)