FP3級の最初の分野、「ライフプランニングと資金計画」
過去の試験で出題の多い箇所をまとめてみました。
この記事では、主に社会保険および公的年金にについて触れております。
社会保険の基本
社会保険と言われるものついて「広義」と「狭義」があり
広義 → 「狭義の社会保険」および「労働保険」
狭義 → 医療保険・介護保険・年金保険
労働保険 → 労災保険・雇用保険
まずは大枠をとらえ、以下個別の頻出項目を押さえておこう。
さらに、自営業者とサラリーマンで入る保険に違いがあることも、合わせて押さえておきたい。
自営業者 → 国民健康保険(こくほ)・国民年金
サラリーマン → 健康保険(けんぽ)・厚生年金
尚、自営業者に労働保険はありません。
公的医療保険
上述のとおり、
自営業者 → 国民健康保険(こくほ)
サラリーマン → 健康保険(けんぽ)
に入ります。
日本は国民皆保険制度を採用しているため、75歳未満はいずれかに必ず属します。
75歳以上になると、強制的に後期高齢者医療制度へ移行されます。
健康保険
健康保険では、保険事業を運営する保険者と、病気やケガの際に保険金が給付される被保険者の概念をまず押さえます。
保険者 → 協会けんぽ・組合健保
被保険者 → サラリーマンおよびその扶養家族
我々サラリーマンは協会けんぽか組合健保のいずれかに属します。
※おおむね大手勤務者は組合健保、中小企業勤務者は協会けんぽ
次に、保険料の支払いについて
国民健康保険および後期高齢者医療制度が全額自己負担なのに対し、
健康保険は労使折半
となります。
日本は自営業者に厳しいと言われるのは、こういうところから来ているのですね
また、病気やケガの際に支払う医療費は、
小学生~70歳まで 3割負担
70歳~75歳 原則2割負担
75歳以上 原則1割負担
ただし、70歳以上で現役並みの所得者は3割負担です。
高額の医療費を支払った際、いくら戻ってくるかの計算問題が実技試験にて出題されます。
その際、上記負担割合を利用するので、覚えておきましょう。
公的医療保険の給付
給付項目は主に以下の3パターン
①傷病手当金
②出産育児一時金
③出産手当金
傷病手当金
3日以上連続して休む
4日目以降から支給される
支給額は標準報酬日額相当額の2/3
通算で1年6ヶ月間が限度
出産育児一時金
一児につき42万円支給される
双子なら倍の84万円支給されます
出産手当金
出産日前42日~出産後56日に支給される
支給額は標準報酬日額相当額の2/3
特に赤字の数字は、よく覚えておきましょう。
任意継続被保険者
退職し無職の期間は、健康保険から退会し国民健康保険に加入しなければならない。
しかし、一定の要件を満たすと、退職後もこれまでの健康保険に入り続けることができます。
尚、任意継続被保険者は
ラッキーナンバー「2」
と覚えると、選択肢で間違えることが少なくなります。
加入の要件
2ヶ月以上継続して健康保険の被保険者(2ヶ月以上勤めた)
退職から20日以内に申請
上記要件を満たすと、最長2年間継続することができます。
ほら、覚える数字は「2」ばかり・・・簡単でしょ?
しかし、2を使った引っ掛け問題が出ることがあるため、要注意!
「退職から2週間以内」に申請 → ×
という引っ掛け問題が、過去に出題されました。
尚、保険料は全額自己負担
会社が辞めた奴の保険料を支払ってくれるわけありませんね・・・
公的介護保険
公的介護保険の被保険者には1号・2号があり、違いを覚えていきます。
・1号被保険者 65歳以上
・2号被保険者 40歳以上65歳未満
まず、1号と2号では年齢および役割に違いがあります。
1号は主に介護を受ける方、2号は保険料を納付する方
1号は市町村から要介護・要支援認定を受ければ原因問わず支給されるのに対し、2号は
特定疾病のみ
支給の対象となります。
例えば、交通事故が原因のときは特定疾病ではないため、支給されません。
雇用保険
会社員として働く際に保険料を納め、失業したら給付を受けられる。
主に覚えるべきは、基本手当が給付される条件で失業理由によって異なります。
・自己都合退職の場合
離職日以前2年間で、被保険者期間が12ヶ月以上あること
・会社都合退職の場合
離職日以前1年間で、被保険者期間が6ヶ月以上あること
また、基本手当が給付される日数は
被保険者期間10年未満 → 90日
被保険者期間10年以上20年未満 → 120日
被保険者期間20年以上 → 150日
となります。
公的年金
まずは年金の全体像をとらえましょう。
介護保険のように1号・2号・3号とあるので、違いを押さえます。
第1号被保険者 自営業・学生・無職
第2号被保険者 サラリーマン・公務員
第3号被保険者 2号に扶養されている配偶者
次に、国民年金(基礎年金)と厚生年金について
20歳~60歳までの全国民が国民年金への加入および支払義務がありますが、2階部分にあたる厚生年金には
サラリーマンなど2号だけ
加入させられます。
尚、厚生年金保険料は健康保険同様、労使折半です。
国民年金の保険料の納付
原則は毎月保険料を納めますが、他にも納付方法があります。
前納 → 最大2年分まで可
後納 → 過去2年分まで滞納した分を納められる
免除・猶予
納付が困難な人(障害や低収入、学生など)が対象
10年前まで遡って追納できる
きちんと免除・猶予の申請を行っていれば、10年さかのぼって追納できます。
一方、未納(滞納)は、2年しかさかのぼれません。
年金の給付
納める方法が分かったら、もらうシーンも覚えましょう。
・一定の年齢になったとき
国民年金 → 老齢基礎年金 厚生年金 → 老齢厚生年金
・障害になったとき
国民年金 → 障害基礎年金 厚生年金 → 障害厚生年金
・死亡したとき
国民年金 → 遺族基礎年金 厚生年金 → 遺族厚生年金
年金は老後にもらえるイメージですが、他にももらえるシーンがあることを覚えましょう。
また、年金の支払月は
偶数月の15日に前2ヶ月分
支給されます。
老齢基礎年金
まず、受給資格を覚えます。
①納付済期間+②免除期間+③合算対象期間≧10年
納付した月だけでなく、免除された月も受給資格期間に含まれることを覚えましょう。
ただし、免除された後10年以内に納付していない場合、給付額には算出されません。
次に、繰上げ・繰下げ支給について
本来は65歳から年金を受取りますが、受取開始を早くしたり遅くしたりすることができます。
・繰上げ支給の場合
早くもらえる代わりに、一生年金額が減額される
1ヶ月繰上げにつき0.4%の減額
・繰下げ支給の場合
受取を遅くする代わりに、一生増額した年金が受け取れる
1ヶ月繰下げにつき0.7%の増額
尚、繰上げの場合、老齢基礎年金・老齢厚生年金の両方に繰上げなければならない。
一方、繰下げは基礎・厚生それぞれ選択することが可能です。
付加年金
国民年金に上乗せできる仕組み
第1号被保険者の期間のみ保険料を納めることが可能です。
付加保険料 = 月額400円
付加年金額 = 200円×付加保険料の納付月数
2年で元が取れると考えると、選択肢で間違うことがなくなるでしょう。
老齢厚生年金
まず、受給資格は何らかの保険に10年以上加入すること
また、厚生年金加入期間はたったの1ヶ月でもあれば支給対象となります。
尚、老齢基礎年金と同様に、65歳から支給されます。
加給年金
厚生年金の加入期間が20年以上であることが条件
配偶者が65歳未満 or 18歳未満の子
がいるときに加給年金がプラスされます。
年金受取前の配偶者や教育費がかかる学生がいると、通常の年金額では足りない・・・という場合の家族手当のようなものです。
障害給付
老齢年金と同様、基礎年金と厚生年金があります。
老齢基礎年金 1級 2級
老齢厚生年金 1級 2級 3級
過去問を見る限り、出題頻度は低い傾向・・・
軽く覚えて出題頻度の高い「老齢年金」「遺族年金」に注力するのもありです。
障害基礎年金の受給要件
「保険料納付済期間 + 保険料免除期間」が全被保険者期間の3分の2以上
※上記を満たさない場合、直近1年で滞納がないことが条件
計算式
1級 老齢基礎年金の満額 × 1.25 + 子の加算額
2級 老齢基礎年金の満額 × 子の加算額
※子の加算額
第1・2子は各223,800円
第3子以降は74,600円
1級と2級では受給金額に1.25倍の差があることを覚えましょう。
※子の加算部分を除く
老齢厚生年金の受給要件
まず、障害基礎年金と違い、3級まであることを覚えましょう。
受給要件は障害基礎年金と同様です。
また、3級より軽度の場合でも、障害手当金として一時金が支給されます。
尚、障害基礎年金が子の加算があるのに対し、障害厚生年金は配偶者加給年金があります。
遺族給付
遺族給付にも老齢・障害同様に、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。
まず、受給できる遺族の範囲を覚えましょう。
受給できる遺族の範囲
①死亡した人に生計を維持されていた子
②子のある配偶者
※子は18歳到達年度の末日まで or 20歳未満で障害等級1級または2級
が子の要件。ただし、未婚であることが条件となります
遺族基礎年金は「子」がいないと受給できません
また、18歳になったら終わりでなく、18歳になる年度内3/31まで受給できます
寡婦年金・死亡一時金
遺族基礎年金が受給できない人が掛け捨てにならないための救済措置
寡婦年金の受給資格
・受給資格期間(10年以上)を満たした夫が年金を受け取らずに死亡
・婚姻期間が10年以上
・60~65歳の間に支給される
尚、死亡一時金は保険料の納付期間等が合計3年以上あれば受給できます。
遺族厚生年金
受給できる遺族の範囲が遺族基礎年金より広がります。
ただし、順位の一番高い者のみに支給されます。
遺族の優先順位
1位 夫(55歳以上)・妻(年齢要件なし)・子
2位 父母(55歳以上)
3位 孫
4位 祖父母(55歳以上)
妻に年齢要件がないのに対し、夫や父母・祖父母は55歳以上であることが要件となります。
また、子の年齢は遺族基礎年金同様に18歳到達年の末日まで(障害1・2級は20歳未満)支給されます。
尚、遺族年金の問題で頻出されるのは、
遺族厚生年金の額
老齢厚生年金の報酬比例部分 × 3/4
※被保険者期間が300月に満たないときは300月で計算
傷病手当金や出産手当金など「2/3」が多い
一家の大黒柱を失うのは相当な問題・・・
それより額は大きくなるのでは?
と考えられれば、選択肢を間違えないでしょう
中高齢寡婦加算
受給資格は40歳以上65歳未満の子のない妻
※子がいても遺族基礎年金を受け取れない(18歳になり打ち切られた場合など)は受給資格があります
子がいないから遺族年金がない・・・
でも40歳超えて、ブランクがありなかなか再就職ができない
という女性のための救済措置です
尚、65歳までの支給なのは、65歳になると自分の老齢基礎年金が受給できるからです。
中高齢寡婦加算は意外と頻出
なので、よく覚えておきましょう。
年金と税金
長かった公的年金分野もこれで最後
まず、年金は支払う期間と受け取る期間に分かれます。
支払い期間は
全額社会保険料控除の対象
となります。
一方、老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取ると
雑所得
として課税されます。
ただし、障害給付と遺族給付は非課税です。
障害を抱えているから、一家の大黒柱が亡くなったから受け取っているのに、
そこから税金取るのおかしくない?
と考えると非課税であることは納得できるかと
企業・個人事業主の年金
頻出される分野ではありません。
個人型(iDeCo)をさらっと覚えて、次に進みましょう。
企業年金の種類
- 確定給付型 受け取る給付額が確定
- 確定拠出型 掛金が確定(受取金額は運用実績次第)
覚えるべきは確定拠出年金で、さらに以下に分かれます。
確定拠出年金
- 企業型 掛金を会社が負担
- 個人型(iDeCo) 加入者本人が拠出
企業型の細かい数字は覚える必要ありません。詰め込むほどコスパがないものです。
覚えるべきは個人型(iDeCo)の自営業者等と専業主婦等の掛け金上限の数字
・自営業者等 年816,000円(68,000円/月)まで
※国民年金基金と合算
・専業主婦等 年276,000円(23,000円/月)まで
ちなみに、拠出額は全額、小規模企業共済等掛金控除の対象です。
運用益も非課税です。
私も満額やっていて、所得を減らすことに躍起になっております(笑)
貯蓄から投資へと言われている時代・・・
今後は頻出問題になる可能性もあるため、
iDeCoについてはある程度押さえておく必要があります
尚、受取シーンでは
・一時金の場合 退職所得控除
・年金の場合 公的年金等控除
の対象となり優遇措置が取られております。
クレジットカード
覚えるべきは1つの数字
3分の1
のみ
総量規制で、貸金業者からの借入金額は年収の1/3を超えてはならないと法律で定められています。
クレジットカード分野は過去問を見ても、この分数の穴埋め問題しか見当たりません。
これだけ覚えれば十分です。
終わりに
以上、前後半に分かれた長い長い「ライフプランニングと資金計画」分野は終了となります。
全体的な概要を押さえるとともに
・任意継続被保険者
・加給年金
・中高齢寡婦加算
といった、耳慣れないけれど頻出される問題を注視して覚えていきましょう。
また、前半部分の「6つの係数」はほぼ出題されます。
実技問題でも出題される可能性が高いため、どの数字に着目するかよく押さえておきましょう。